ビッグモーター設立は昭和53年、本州の最西端山口県は岩国市で産声を上げた株式会社ビックモーターは、2016年8月現在、開店準備中の店舗も含めると242店舗を展開しています。

一部グループ企業であるBMホールディングスが運営するフランチャイズもありますが、そのほとんどが直営店で広い中古車販売ブースや板金・修理工場を完備。

買取や販売はもちろん、損保やカーリースまで車に関することならここに来ればすべてできるという「ワンストップショッピング」型の大型店舗を主に郊外に設置、3000人を超える従業員によって運営されています。

巨大な店舗による集客力と利便性、顧客の囲い込み能力の高さを武器に、本来の地盤である中国・九州地方でその勢力を広げると、関西地方で独特のCMが話題だった土着型中古車会社「ハナテン」を吸収。

その勢いは関東や東北地方にも及び、市場調査会社大手「矢野経済研究所」が毎年発行する中古車流通総覧の2015年度版によると、業界トップの買取台数を誇るガリバーの22万台には及ばないものの、ラビットを抜き第2位の13万台の買取実績を収めています。

ビックモーターの強みはその販売力

ビックモーターの査定の特徴は、大きな視点から言えばズバリ「売れる車の買取はめっぽう高評価」という一点に尽きます。

なぜなら、ガリバーに遠く及ばない買取台数に対して、その販売台数はガリバーとほぼ同数で業界トップ水準。

つまり、広い店舗で車検やそれに伴う修理、板金などで抱え込んだ顧客への中古車販売力が、圧倒的に他の中古車業者を上回るということで、売れ筋の人気車種を他社に負けない査定額でたくさん仕入れて、広い販売ブースを充実させる必要があるということです。

そして、現在中古車市場で売れ筋とされているのは、

  • 軽自動車
  • ミニバン
  • コンパクトカー
  • ハイブリット・電気自動車

などで、これらの査定に対しては展示車両の充実のため、他の買取業者を上回る査定額を提示してくることも少なくありません。

直販型であるメリットとデメリット

もっと詳しくビックモーターの査定について触れる前に、ここでいったん中古車買取会社の種類ついて説明しておかねばなりません。

というのが、この種類で買取査定の傾向が変わるからで、大きく2つのスタイルに分けることができ

オークション出品型・・・買取した中古車を業者専用オークション会場に出品して利ざやで利益を上げるスタイル
自社直販型・・・自社の販売ブースに商品として仕上げた中古車を並べ売ることで利益を得るスタイル

の2つがそれで、ビックモーターは直販型に属します。

直販型は、本来オークション会場に支払う使用料や会場までの陸送費などの経費が必要ないことから、それらを見込んで査定額を下げることがなく、売り手にとって高い査定額を出すことができます。

そして強力な販売力と、直営店の圧倒的な情報ネットワークを持つビックモーターの査定は特にその傾向が強く、それが今日の急成長を支える要因となっています。

一方、直販型中古車買い取り業者にも弱点があり、それが諸所にかさむ人件費の高騰です。

販売ブースを持つということは、そこに並べる中古車のメンテナンスから販売スタッフ整備や車検を行うメカニックや板金スタッフまで、多くの人員を抱えることになるからです。

そして、3000人を超える社員が働くビックモーターはその膨大な人件費分を中古車販売で得ていかなくてはいけません。

ただ、ビックモーターは販売だけで利益を得ているのではなく車検や整備、保険など他の車関連ビジネスについても非常に充実させているので、他の直販型中古車業者より、人件費の捻出能力は優れているのも事実。

さらにそれは、顧客の囲い込みという中古車販売において最も大切なメソッドとなって、更なる中古車販売の拡充に繋がり、合わせて高額査定が実現する高サイクルを産んでいるのです。

ビックモーターの車査定チェックポイント

ここまで述べた特徴から導き出される、ビックモーター買取査定の傾向は

  • カラーリングやボディー状態などの見た目がよい
  • 即車検を受けられる足回り
  • 低走行車

に対する査定額の高さが目立ちます。

こういうと他の業者もそうだろうという方もおられるでしょうが、オークション型の買取業者は見た目がどうであれ人気がどうであれ、業者が必要と感じて買い取り額+諸経費を上回る落札額が得られれば利益が出るので、「玄人受け」さえよければ、ある程度の買取査定額をつけます。

しかしビックモーターは、買取した中古車のほとんどすべてを自社販売するスタイルなので、自社の販売ブースの目玉となる人気車種で、しかも即商品化することができる車体であるか厳密に見極める必要があります。

そして、「売れる」と判断した時は、販売力維持のための客寄せ効果も見込んで、他社より高い査定額をつけてでも買取しようと試みます。

つまり、低走行で人気車種・カラーであるなど店を訪れた「素人」が一見するだけでいい中古車だと思う車体を求めるという訳。

ですので、車愛好家が好むスポーツカーや、本格派のRV・SUVなどユーザーが絞られる車種。

加えて、いくらそれが人気・高級車種であったとしても、足回りに問題を抱え車検するのに費用のかさむ車体や、大きな板金・塗装を施さなければ店頭に並べられない状態の車体など、販売によって利益が出にくい車に対しては、他社より高額査定を出すことはなかなかありません。

実際に査定を受けた結果…回顧録

誰にでもその傾向がわかりやすくするために、ここで1つすべてがこれに当てはまるわけではありませんが、筆者が実際にビックモーターに「査定依頼」をした例を挙げましょう。

数年前のことになりますが、買取査定をしてもらった車は、

13年落ち ミラ 白 走行距離38,000km というスペック。

目立った大きなへこみなどはなく、足回りも元整備士の筆者が見る限り、大きな整備をせずともそのままユーザー車検を通過できるレベルでした。

実は、プロに言わせれば13年で走行5万キロにも達していないこの車体は、1日に10kmも走っていない、眉に唾をつけてみてしまう「走りすぎていない」不審車両です。

というのが、これが実走行ならいざ知らず、こういった車は事故を起こしたりして長く板金工場で保管されていたり、無車検の状態で中古車業者の片隅で何年も眠っていたものが世に出てきた、「休眠車両」である可能性が高いためです。

使っていない家電が故障するのが早かったり、住んでない家がすぐに傷んでしまうのと同様に、車もある程度動いていないと「動いている事」を前提に作られている電気系統や、エンジンなどに不具合を生じることがあります。

この車体は年を召された前オーナーが、日頃の買い物程度にチマチマ乗っていた車を譲り受けたものなので問題はありませんし、車検のチェック項目である足回りは「走った距離で消耗する」ものが多いため、痛手のない場合が多いのです。

この車体、あるオークション出品型買取専門店では電話した途端、実車を見もしないうちに「査定額ゼロ」との回答でしたが、ビックモーターは出張査定で「6万円」の数値を出してきました。

おそらくオークション型買取業者は、「古い年式」と「少なすぎる走行距離」から、時間と手間のかかる、出張査定に赴くほどではないと判断。

また、オークション会場では事故歴やメーター改ざんの有無、ボディーの修復箇所はわかりますが、「休眠期間」があるのかは誰にもわかりませんので、そういった車両は毛嫌いされる傾向にあります。

ですのでそれを仮に買取、出品しても上記で述べた「プロ受けの悪さ」から、落札されないもしくは落札価格が伸びず、利ざやの得られない「買い倒れ」する可能性を考えたのでしょう。

結局はどこにも売らず、ユーザー車検に走って乗りつぶしたのですが、低走行で軽自動車の白、だれにでも訴えやすい低走行車だったこの車のような場合は、たとえプロの評価が低くても、ビックモーターは自社で直接「売れる」と判断すれば、意外にも高額査定を出す可能性があるということです。

まとめ

上記で上げたミラの買取査定額ですが、その時のニーズや実際にみた査定員の判断にも左右されることなので、今全く同じ状態の車が同じ価格で査定されるという訳ではないことを、最後にお断りしておきます。

ただ、今巷で人気の車種にお乗りでそれを買取査定に出すとき、販売力の強いビックモーターは高評価を下す可能性も高い業者の筆頭なので、その査定額を一度はチェックしてみたほうが良いと考えます。