所有権とは何?存在自体気づかないこともあるみたいです。

車を新しくローンを組んで購入し車検証の所有者欄を確認すると、そこに金融機関の名前やディーラーや中古車販売店の名前が記入されていて、「おや?」って思った経験はありませんか?

それは「所有権の留保」というシステムで、ある2つの理由からそれを設定されているのですが、販売店やディーラーの中にはこの所有権制度について詳しくユーザーに説明をしないもしくは説明されてもややこしいため、さして気にしていない方も意外に多い。

ただ、この所有権の存在は後々大きな影響をもたらすので、カーライフを円滑にするためには知っておいた方が良い事柄の1つです。

なぜ持ち主が自分ではないの?

車検証ローンを組んでお金を支払うのは自分なのに、なぜその所有者が自分じゃないんだ!と実際にかなり強い口調で突っ込まれた経験も筆者にはあります。

時に数百万にもなる自動車代金を踏み倒されないようにするための制度が、この所有権の留保であり、この所有権がついている限り名義変更が不可能なため所有権を持つ業者に無断でその車を売却することはできません。

現金一括はもちろん、数十万円のリーズナブルな中古車をローンで購入する時はこの所有権がしっかり購入者本人になっているますが、新車購入時はよほどの高収入でもない限りこの所有権はローンの支払いが完了するまで、「もしも」のために販売店や金融機関が確保しています。

ローンの支払いが完了するとこの所有権を解除することができますが、その際必ず元の所有権者と連絡をやり取りしなければならないので、ディーラーにとっては買い替えを知る大きなきっかけとなります。

これは、囲い込みが重要な顧客確保につながる各自動車販売店にとって大きな武器となる事も、この所有権留保には隠された意味があります。

また、未成年の場合ではその両親が車の購入代金を肩代わりしたり、ローンの連帯保証人となっていてその所有権が親権者になっている場合もあり、この時も親権者の許可が出ない限り勝手に車を売却したり他人名義に変更することはできません。

これはあくまで、未成年者が高額になる可能性のある車の売却代金を、みだりに受け取れないようにするための処置であり、未成年者の自立を促すのであれば成人後やローンの完済とともにこれも解除してあげる必要が出てきます。

売却や下取りのために所有権を解除する方法とは

そのままにしておくといつまでたっても車を売れないかというとそうではなく、ローンの支払いが終了していれば、この所有権を簡単に外すことができます。

買取業者や中古車店舗に売却する場合は、その業者がローンの支払い状況を確認してきてその確認がとれれば業者が勝手に解除をしてくれます。

また、ローン終了後自分で所有者欄に記されている販売店や金融機関にそれを外したい旨を連絡すれば、数日で「譲渡証明書」・「印鑑証明」・「委任状」の3点セットが送ってくるはずなので、それをもって管轄陸運局に行けば所有権を自分の名前に書き換えることができます。

自分で所有権を解除するメリットは、最近増えているヤフオクなどでの個人売買が可能になることと、せっかくローンが終わったのだから名実ともに自分の持ち物という証明ができるという、自己満足的なものになります。

買取店に売却したり下取りに出すときは、その手数料などが設定されていなければ特に自分でやるメリットはありません。

付け加えますが、ローンの支払い途中でもその車体を購入した先のディーラーや販売店であれば、残債分を組み込んだ新ローンの審査が通過したとき、その所有権が自動的に解除されるため新規車両購入の際、下取りや買取に出すことは可能です。

事故や盗難、災害に伴うなどで廃車にしたローン途中の車に付けられている所有権への対応

新車をローンで購入し、所有権のつけられている車体が不意になくなってしまう可能性もゼロではありません。

それが不慮の事故や盗難被害、自然災害によるもので、この場合でもすでにその場にはない車のローンは払い続けねばいけませんし、それに伴って所有権はしっかりと留保されています。

しかし、廃車にしないと毎年春に通知が来る自動車税を払う義務が所有者にはありますが、この所有権の付けられた車の場合所有権者に無断で廃車にすることもできず、その納税義務は所有権者ではなく使用者に発生するので、乗ってもいない車の税金を払い続けなければならない状況に。

この場合、まず事故によるものであれば自動車保険で残債を処理できた場合は問題ありませんが、そうでない時はスクラップした時に業者から発行してもらえる解体証明書を入手後、所有権者と話し合って永久抹消の手続きをすれば、自動車税は以降発生しなくなります。

また,盗難のケースでは盗難届を地震など自然災害の場合は羅災証を陸運局に提出することで廃車をすることが可能になります。

金融車両とは

単純にローンが払えなくなった車のことではありません。所有権の話に関連して、世の中には「金融車」という俗称で呼ばれ流通している車体があることにも触れておきます。

所有権が留保された車のローン支払いが滞り、その継続が著しく困難だと所有権者が判断すると、その車両は金融会社や販売店が引き上げる権利を行使してしまいます。

ここでまず誤解が生じているのですが、所有権者本人が引き上げたこの車体は名義変更をすることができるので、普通の中古車として再販可能なので、いわゆる金融車ではありません。

金融車とは所有権者以外の人間もしくは業者が、借金などの担保とにしてお金を貸した場合、その支払いが滞ったときに車両を持って行った名義変更のできない車両のことで、名義変更できないことを承知でネットオークションなどであからさまに流通している車のことです。

金融車のデメリット

この金融車は、同じ状態の車種と比較すると一般の中古車相場の5割から6割程度の価格帯、かなり安い価格で出回っていてネットなどで発見すると、つい買いたくなってしまう方も多くいて、個人売買では金融車であることに触れられておらず、そうと知らずに購入してしまうこともあります。

ただし、所有権者の意思に反したところで取引されたこの金融車には、以下で触れる大きなデメリットがあることを忘れてはいけません。

1、任意保険に入れない

自動車保険に入るときは所有者が、契約者本人とその親族あるいは配偶者とその親族である必要があり、所有権がつけられている場合は使用者がそれに当たれば加入可能です。

しかし、金融車の場合仕様車も赤の他人であるため多くの場合で任意保険に加入することができず、事故などを起こすと非常に苦労する可能性が高くなります。

2、車検が受けられない可能性

車検を受けるときは納税証明書が必要ですが、お金に困っている可能性が高い前使用者が自動車税を滞納しているケースが非常に多いので、車検を受けられない場合があります。

3、永久抹消ができない

永久抹消するには所有権者の印鑑証明と委任状が必要で、所有権者に無断で売り捌かれた、金融車のそれを入手することは非常に困難です。
そのため自分の力で廃車にするのはまず無理、ごくまれに、高い手数料を取って金融車を廃車引き取りしてくれる業者があるにはあるので、それを探すしか手がないでしょう。

また、金融車は最悪の場合盗難などの犯罪と関わっている可能性もあるため、後々お金だけでは済まないトラブルの原因にも。

金融車の購入は慎重に慎重を重ねる必要がありますし、筆者の個人的な意見ではよほどの事情でもない限り買うべきではないと考えています。

ネットなどで個人売買するときには金融車ではない、つまりちゃんと名義変更ができる車なのかを事前に確認することが大切となってきます。

まとめ

所有権がつけられているからといっても、カーライフをエンジョイするうえで何ら支障はありませんし、ローンの支払いが順調に終わればその売却も敗者も自由、付けられていることに対して普段それほど意識する必要はありません。

ただ、一緒に紹介したデメリットの大きい金融車の存在ともども、この所有権の扱い方を覚えておけば、車購入や売却、廃車などをする時にきっと皆さんの役に立つでしょう。